夢みる蝶は遊飛する
「いいけど、できれば今日中に返してほしいな。週末に家で復習したいし」
来週の木曜日から始まる中間考査に向けて、スパートをかけなければならない。
特に世界史や日本史などは暗記をしなければならないので、時間がかかる。
週末に繰り返し勉強するためには、ノートが必要だ。
「わかった! 次の生物の時間に写して返すから!」
輝くような爽やかな笑顔を残して彼は私からノートを受け取って自席へ戻っていった。
生物の時間に写す、ということは、次は生物のノートを貸さなければならないのだろうかと思い、複雑な気分になった。
案の定、というべきか。
須賀くんは生物の授業も睡魔に負けたらしく、私のノートを広げたままで居眠りしていたらしい。
どうしよう、ごめん写してない、と散々謝られたけれど、私には答えようがなく、ただただ苦笑いを浮かべていた。
結局あのあと須賀くんは図書室のコピー機を使って私のノートの複製を手に入れた。
私的な利用は禁止なのだけれど、司書の先生がちょうど不在だったらしい。
返された世界史と生物のノートを鞄に入れ、私は帰宅した。