夢みる蝶は遊飛する
そつなく問題なく終わるであろうこれからの高校生活のことを考えていたら、隣から声をかけられた。
「高橋さんって、生まれてから東京にずっと住んでたの?」
「え・・・う、うん・・・」
今まであまり異性と話したことの無かった私は、不自然なまでに慌てて彼に言葉を返してしまった。
話しかけてくる彼に、どうしたものかと内心焦っていたら、助け舟が。
「ちょっと須賀、あんたがっつきすぎ。この子ビビってるじゃん」
私の前の席の女の子が振り向きながら言った。
胸の下まである髪は綺麗に巻かれていて、顔には濃くない程度にしっかりと化粧が施されている。
「あたし、水野沙世ね。よろしく」
「あっ、俺、須賀祐輝。ちなみにバスケ部!」
二人に向けて、もう一度自己紹介をした。
「高橋亜美です」
私が言い切るか言い切らないかというタイミングで、須賀くんがまた口を開いた。
どうやら彼の口は、一度開いたらなかなか閉じないらしい。