5月1日―幸せの訪れる日―
「鈴?おーい。鈴?」
「ほぇ??」
「クククッ……ほぇって……ククク…ほら、学校着いたぞ。」
嘘っ
樹が行ったとおり何時の間にか学校に着いていたみたいだった。
「ほら鈴。置いてくぞー」
「うそーん待って!!」
私は私の先を走る樹を一生懸命追いかける。
「捕まえた!!」
「はぁ…はぁ……お前足速いなぁ。」
そう言って樹は私の髪をぐしゃぐしゃにしながら撫でる。
「もう!!髪がぐしゃぐしゃなっちゃったぁ!!」
こういう言葉は私の照れ隠し。
そういう私のことをしっかり樹は理解してくれている。
樹は優しい。
樹が本気で走ったら私が追いつくわけなんかない。
樹はいっつも私が追いつけるようにゆっくり走る。
そして冗談を言いながら自然に私の鞄を持ってくれる。
歩いて帰るときは校門をでたらすぐに車道側に出る。
樹は本当に優しいんだ。
私にはもったいないくらいに。
できれば裏切りたくなかった。
このまま樹と幸せになっておきたかった。
悪いのは私。
自分の本当の思いに気づいてしまったから。
運命の歯車はギシギシ言いながら回り始めた。