5月1日―幸せの訪れる日―
蘭side
学校が終わり、家に帰る途中だった。
俺は早歩きで家に帰る。
家に少し近くなってきた頃だった。
「あれ~蘭?」
後ろを振り向くと男の人が漕いでいる自転車の後ろから
ひょこっと顔を出した鈴が居た。
「蘭、今帰りなんだ」
「あぁ…」
「………」
「鈴?ちょっと坂道キツイから降りてくれる?」
「あぁっ樹、ゴメン」
「大丈夫。ほら行くぞ。」
車道側に樹と呼ばれる男が内側に鈴が並んで歩いた。
この男が…鈴の…彼氏。
鈴とその彼氏は2人で話していた。
俺も最初は近くで歩いていたけど何か居心地が悪い。
さっきは普通の声で話してたのにいきなりこそこそ話になる。
その内容は俺にとっては苦痛なものだった。
『違うと思うけどさ、あの子彼氏とか言わないよね?俺が彼氏だよね?』
『ふふっ当たり前じゃん。蘭は私の弟だよ』
【蘭はわたしの弟だよ】
そうだよ。
俺は弟なんだ
鈴は姉で俺は弟
弟…
弟…
「俺は……弟なんだ……」
「へ?蘭、何か言った?」
俺がぼそっと何か言ったのを聞き逃さなかった鈴が問いかける。
「何でも……俺、先帰るわ。」
俺は走り出す。
「蘭?!」
と叫ぶ鈴の声が聞こえたが止まるわけなんか無い。
弟は姉の恋路を邪魔しちゃいけない。
……いけないんだ。