5月1日―幸せの訪れる日―
俺は必死に涙を拭う。
何度も何度も頬を擦る。
だけど涙は出てくるばかりだ。
何で……涙………止まれよ。
ポタポタ零れ落ちる涙が、俺の学ランに水玉模様を描いていく。
「……クッ……くそっ」
俺はその場に落ちていた缶を蹴り飛ばす。
こんな事をしても心が晴れるわけなんかなくて。
気が付いたら家の前にいた。
俺は家のドアを開け家の中に入る。
「わっ!!蘭?!ただいまくらい言いなさい。びっくりするじゃ…
蘭?泣いているの?」
ばれない様にこっそり家の中に入ったつもりだったが
母さんが玄関の拭き掃除をしていたから見つかってしまった。
泣いているの、見られたく無かったのに。
俺は母さんを無視して2階に上がる。
階段を上る途中、後ろを振り返る。
「母さん、俺が泣いてた事父さんにも鈴にも言うなよ」
俺は歩いていた方向に身体を向けなおし
タッタッタと駆け足で階段を上った。
俺が部屋の中に入るとき後ろからクゥンという泣き声が聞こえた。
「マロン…」
マロン。家で飼っているチワワのオス。
あともう1匹スノゥの言うチワワのメスも飼っている。
「マロン、おいで。」
俺がそういうとマロンは尻尾を振ってきて俺の脚に飛びつく。
俺はマロンを抱きしめて部屋に入った。