5月1日―幸せの訪れる日―
瑞穂はどうしてこんなに勘が鋭いのだろうか。
「私、蘭くんの何?彼女でしょ?家近いし…一緒帰ろ?」
瑞穂は俺の制服の裾を握り上目遣いでこっちをみる。
中学生でこんな事する奴が居たんだなと軽く関心してしまう。
「ね?いいでしょ?」
瑞穂の言葉で俺はぼーってしていた頭がおきる。
そして
「………ああ。いいよ。」
そう返事をしていた。
目の前にはとっても大喜びの瑞穂。
キラキラとした笑みを浮かべて俺を見る。
「ありがとう」
やさしく微笑む。
……こういうところ鈴と少しだけ、似てるな。
「じゃぁ、帰り教室で待ってるね。ばいばい」
小さく手を振り教室へ瑞穂は長い髪を揺らしながら走っていった。
あっという間に時間は過ぎていくもので。
気がつけばもう、放課後。
さっきまでは教室に居た奴等も、気がつくとほとんど居ない。
あぁ…俺は瑞穂を向かえに行ってやらないと。
俺は鞄を持ち、瑞穂の教室へと向かう。
瑞穂の教室を覗くと瑞穂は窓辺に立っていた。
風が吹く。
その時髪がふわふわと靡き、その髪の間から見えた瑞穂の横顔は
とても綺麗だった。
「あっ蘭くん!!今行くね!!」
俺はまたぼーっとしていた。
さっき見た瑞穂の横顔が忘れられず…。
綺麗で美しくて、とても……
悲しくなる。そんな表情を浮かべていた。
「蘭くん、お待たせ!!………蘭くん?」
瑞穂が俺の顔を覗く。
「あぁ…ごめん。行くか。」
「うん!!」
瑞穂は俺の左腕に手を絡める。
俺は少しびっくりした。
「ふふ。どきっとした?」
少し意地悪そうな表情を浮かべる。
そこからは余り覚えていない。
何でだろうか。
鈴にとても会いたいという気持ちでいっぱいになっていた。