5月1日―幸せの訪れる日―
チクタク…俺の部屋には時計の秒針の揺れる音と、マロンの寝息しか聞こえない。
…遅い。遅すぎる。
今PM9:00。
ふつーは18時には帰ってくるだろ。
お袋は「もう鈴はそういうお年頃なのよ。」とかすましてやがるし。
俺はさっきから落ち着きがない。
…くそ。早く帰って来いよ、鈴。
ガチャ
玄関のほうから音がした。
お袋と鈴の声が聞こえる。
生憎、何て言っているかは分からないが。
暫くすると階段をテンポよく上がってくる音がする。
丁度その足音が俺の部屋の前を差し掛かる時俺は部屋のドアを開けた。
すると案の定鈴が驚いて立っていた。
鈴の髪型は少し崩れていて…
少しまだ赤い鈴の顔。
首には赤い印。
今日何があったかを意味するものだった。
「蘭??どうしたの??」
「…いや…」
俺は鈴の前に出て行って何を言おうと思ってたんだろうか。
「何してんだよ。遅いじゃねぇか。」か??
「今、何してたんだ。」か??
自分でも何がしたかったのか分からない。
「蘭??」
「あ……鈴、帰り遅かったから心配してた。」
俺は軽く下を向いていたのだがそっと顔を上げるとにこっと笑みを浮かべた鈴がいた。
「ありがと。心配させちゃってごめんね??樹と居たから…でも、姉を心配してくれるような弟を持って私幸せものだね」
極上の笑みを浮かべてそう言った。
俺はただ、苦笑いで「あぁ、そうだな。」
そう言って部屋に戻った。