5月1日―幸せの訪れる日―
「ん」
俺は鈴に向かって袋を差し出す。
「あ…ありがと。」
「………」
「開けて、いい??」
「――――あぁ」
箱を開ける音がする。
こんなものでよかったのかと思うが買う時これが目から離れなかった。
「ありがと。ボトルかわいい!!!今つけてもいい??」
「ん。」
シュッ
霧吹きで手首にかける音がする。
その瞬間ぶわっと甘い香りが漂った。
俺が鈴にあげたのは、白いハートのボトルの中に入った
香水。この匂いは鈴によく似合っていると思った。
甘い、清純な、香り。
「さて。じゃあ次は蘭ね」
お袋が俺のほうを見て言う。
「今年はお父さんと2人で買ったの。ごめんなさいね」
「いや、別に。」
俺が買ってもらったのはギター。
俺は小学の高学年にあがる頃までピアノをしていた。
鈴の影響で。
当の鈴はサボりまくってて俺がやめる2年くらい前にはやめていた。
俺もその時やめようと思ったのだが、先生にもお袋にも続けろと言われて続けたが
結局やめた。
でも、俺は音楽そのものがとても好きだから。
ピアノじゃなくてギターを始めようと思った。