TRUE
「勝負の世界の厳しさは私だって知ってる。自分の実力が出せなくて負けるのが怖いことも……でもさ、やれるだけやってみなきゃ。そしたら、少なくとも“後悔だけはしない”」


君哉はしばらく菜美を見つめた。


「『何も知らない』やつが…エラそうなこと言うなよ。」
君哉の口調から、菜美は少し言い過ぎてしまったと悟った。 しかし…


「『何もしようとしない』やつより良いでしょ?朝倉クンなら出来るよ。朝倉クンはあの時、話したコトもない私に一枚しかない傘代わりの上着を貸してくれた。
そんな人が挑戦する勇気もないなんてありえない」


菜美は君哉を見つめた。君哉は下を向いていた。

「朝倉クン…ホントはテニスしたいんでしょ?なのに、そんな意地はってたらいつまでたっても何も変わらないよ。いつかなにかが…なんて考えてちゃダメ。“自分が動かなきゃ何も変わらない”んだよ」


君哉は顔上げて菜美を見た。心無しか、驚いたような表情だった。


「私、朝倉クンには感謝してる。だから…頑張って欲しい」
菜美はそう言って、瞳たちの元に戻っていった。

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