TRUE

冒険

君哉はしばらく菜美に見とれていた。その視線に気づき、菜美はまた顔を上げた。

「ど…どうしたの?君哉くん? あっ!私の顔なんかついてる?」
菜美はそう言って、顔をペタペタした。

「いや…これからどうしようかと思って。」

君哉は慌てて平静を装った。そしてさっき見つけた道を指差して言った。

「とりあえず、あっち行こう」

君哉がそう言って歩き出すと、菜美も立ち上がり後ろからついてきた。


砂浜の道は延々と続いた。時折、菜美はしゃがみ込み、貝殻を拾っては1人微笑みを浮かべ、君哉が振り返るとで駆け寄ってきた。

2人は無言で歩き続けた。打ち寄せる波の音が響いた。辺りは少しずつ暗くなり始め、海は足首のあたりまで満ちてきていた。

ジャバジャバと音を立てて歩きながら、君哉は焦っていた。

《このままでは、海に流されてしまう…》


しかし、左手にある崖は登れそうにもない。どうしようもない焦りで、君哉は思わず菜美を振り返った。
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