TRUE

君哉が振り返ると、菜美は目をパチパチさせ、「どうしたの?」という顔をした。まだ髪が濡れたままだ。

その美しさに、君哉の焦りはフッと消え去った。

こんなに美しい人を神様が死なせるわけがない。いや……俺が死なせない。


君哉は何事もなかったように、前に向き直った。

すると、遠くに崖が飛び出しているのが見えた。崖は崩れたのように穴がぽっかりあいていて、それを入り口にして、中は空洞になっているようだ。

2人は顔を見合わし、急いで崖に近づいて、中に入った。

菜美は思わず声を漏らした。崖の中はまるで煙突のように、見事な円形の筒状になっていて、上には青空が見える。

また、波が周りの壁に反響して、不思議なメロディーを作り上げていた。

2人はしばらく上を向いたまま、この煙突に見とれていた。

しかし、君哉は煙突のてっぺんにコケがついて色がはっきり分かれているのに気づいた。あの位置まで海水が満ちてくるということだ。

《このままでは………まてよ、満ちてくる??》

「望月、立ち泳ぎできる?」
君哉は突然、菜美に問いかけた。しかし、菜美は全く驚く様子も見せず、逆に微笑んだ
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