TRUE

人魚

一瞬、君哉は目を疑った……


“人魚だ“


2人が呆然としている間に人魚は海から上がり、完全に姿を表した。。足元を見ると確かにヒレになっているが、それは半透明でわずかに地面から浮いていた。

君哉たちは人魚だけでなく、幽霊の存在も同時に認めなくてはならなかった。

「綺麗な歌声ね。私たちを歓迎してくれているのかしら?」
人魚は菜美と同じくらい透き通った声で言った。

{……私たち?}

君哉は人魚の視線を見て、ハッとして後ろを見た。

そこにはまたしても、幽霊がいた。しかし、人魚ではなく古い時代の服を着た若い男性だった。

男性の霊は膝から下が透明で、ゆっくりと滑るように人魚に近づいていった。


静かな花畑に一陣の冷たい風が吹いた。菜美の前髪がフワリと浮き、2人は寒さで少し身震いした。

しかし、この身震いは風のせいだけではもちろんなかった。


男性の霊は君哉たちの前を通り過ぎ、人魚の目と鼻の先まで近づいた。その時………

地面から眩い光が天に向かって伸び、人魚と男性の霊の間に、縦にも横にも無限に広がる光の壁が現れた。

まばゆい光に辺りは一気に明るくなった。

人魚は悲しそうな顔して、壁に手を当てた。

どうやら、あの壁が天の川のように2人を遠ざけているようだ。

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