TRUE
しばらくすると、君哉は菜美たちの元に戻ってきた。菜美が心配そうな顔をすると、君哉は大丈夫だと頷いた。
「さて…そろそろ君たちも帰らないとね。 お礼に君たちが落ちる前の場所まで送ってあげよう。」
「でも、どうやって…?」
菜美が言った。
「心配いらないよ。じゃあ、まず手をつないでくれるかい?」
霊がそう言うと、2人はどぎまぎしながら手をつないだ。
「そして、目をつむって君たちが落ちてきた場所を思い浮かべてくれ。」
2人が手をつないでいる様子を見て、温かく微笑みながら霊が言った。
霊の顔を見て、本当は手をつなぐ必要はないのだと君哉は悟った。しかし、不思議とこっちのほうが良かった。
菜美の手は優しく朗らかで、そして強かった。
君哉が目をつむると、辺りがだんだん明るくなり、柔らかい風がほほをなでるのを感じた。
しばらくして、ハッと目を開けると、2人は道から少し落ちたところの木に引っかかっていた。
辺りは明るく、落ちた時から時間が経っていないかのようだった。
《もしかして…夢だったのか?》
そう思った君哉は菜美に今起きたコトを覚えているか聞こうした。しかし、君哉が口を開きかけた時遠くから2人を呼ぶを声が聞こえてきた。救助が来たのだ。
「大丈夫か?ケガしてないか?」
救助にきたガイドの人が手を差しのべようとしゃがみこみながら言った。
君哉はゆっくり起き上がりながら思った。
菜美が今起きたコトを覚えているかなんてどっちでも良い。あの出来事は君哉のためにあったのだから。
ガイドの手につかまった君哉のもう片方の手はまだ菜美につながったままだった。