TRUE
「むちゃだよ朝倉クン!テニスやったことあるの?」
瞳が必死で言った。君哉はシカトした。
君哉がラケットを持ってコートに立ち、反対側にヤンキーたちが並んだ。
「さぁ来いよ。1回で終わらせてやるぜ」
君哉は構えに入り、右手でボールを上にあげた。
一瞬だった。
ボールはサービスボックスの端をすべるように通り過ぎた。
ヤンキーは動けなかった。
「速えぇ!なんだアイツ…」
ヤンキーたちがざわついた。
「速くねぇ。今のはコースだ。反応しにくいとこに入ったんだよ。」
ボスが冷静に言った。
「仁さん……じゃあアイツそうとうやり手なんじゃ……」
「いや、今のはまぐれ。フォームがぐちゃぐちゃ過ぎる、素人だ。」
しかし、その後も誰一人としてラケットにかすりもしなかった。そしてボスの番が回ってきた。
「やっと最後か…」
「今までのはあってなかったようなもんだ。悪いが俺からエースは取れないぜ。」
「あぁそう」
君哉は面倒くさそうに言って”トス“を上げた。
「馬鹿め!仁さんは全国大会出場の実力の持ち主なんだよ!」
ヤンキーたちが笑いながら叫んだ。