先生とあたし(仮)
1.先生とあたし-春-
▽新任教師
4月――
「ふぁー…眠い」
口に手を当てて欠伸をした。
あたしはそっと壁に寄りかかる。
ちょっと昨日は夜更かししすぎちゃったかも。
頭の中でそう考えながらうつらうつらと頭を揺らす。
「ちょっと、ハル大丈夫?
進級初日から勘弁してよねー」
後ろを向いてコソコソ話かけてくるのは、あたしの親友の村岡 百合(ムラオカ ユリ)。
髪の毛ゆる巻にして目がぱっちりのかわいい子。
いつもと変わらない。
今日もバッチリ女の子。
「んー…英語の課題がなかなか終わらなくてさー」
そう言いながらもう一度欠伸をする。
「ハル、英語は特に苦手だもんねー」
クスクス笑いながら百合はまた前に向き直った。
あたしの名前は篠塚 悠(シノヅカ ハルカ)。
ハルっていうのはあだ名ね。
ありきたりだけど。
本日、高校2年生に進級しました。
今日は記念すべき2年生の初日で、今は始業式の真っ最中。
開式の言葉から始まって、校長先生の話がダラダラ続いてる。
うちの学校の校長は話が長いことで生徒に有名なんだよね。
はあー…もう勘弁してよー。
なんとかがんばって目を開こうとするけど、やっぱり眠気には勝てなくてあたしは式の途中から意識を手放した―――。