先生とあたし(仮)
「ていうか、夕飯の買い物って何?」
「景斗が夕飯作ってくれるの」
ほんとは料理を教えてもらう訳だからちょっと違うけど。
「少しは自分で炊事できるようにならないとダメじゃん」
「だーかーらー、そのための景斗なんだって。景斗はあたしの料理の師匠」
「何で景斗くんがハルの料理の師匠ー?」
有美がスプーンを口に運びながら何気なく聞く。
「お母さんが勝手に頼んだ」
「でもそれくらいで普通やるー?」
景斗くん部活忙しいのにー、と続ける。
「……」
景斗は小さいときからずっとサッカーをやっている。
その腕前は高校生になった今では、エースポジションを仕留めるまでになったらしい。
「…前から思ってたけど、景斗くんまだハルのこと好きなんじゃ―」
「ないよ。付き合ってたのも、もう何年も前の話だよ?」
確かに変態行為をしてきたりするけど、あれはふざけてやってるんだろうし、今は昔からの幼なじみっていうかなんていうか。
有美はまだ、そうかなー?なんて小さな声で呟いている。
「そういえば今日サッカーの練習ないのかな?」
部活を休んでまで来てもらうのは、さすがに気が引ける。
「今日は明日が入学式だから準備で休み」
百合がすかさず答える。
そっか。外の部活っていろいろ準備に借り出されるもんね。
「ダンス部はそんなんないから忘れてた」
あはは、と笑いながら瀬南が肩くらいまでの金色の髪を揺らす。
「百合帰宅部なのによく知ってるねー」
有美の語尾を伸ばすような独特の口調が百合に問いただす。
「イケメンの宝庫、サッカー部のことですから。あたしの情報網舐めないでよね!」
あたしたち3人は固まる。
恐るべし…百合様。