先生とあたし(仮)

前を歩く百合の足が、まだ綺麗なドアの前で止まる。


ここが準備室かあ。


周りは空き教室ばかりが目立って、ひっそりとした雰囲気。


――コンコン

「失礼しまーす」

百合が軽くノックをして英語科準備室へと入っていく。


部屋の中から百合の楽しそうな声と槻嶋の低い声が微かに聞こえてくる。


なんか…今更ながら顔合わせたくないな。


百合の前で昨日のことうっかり言っちゃいそうな気がするし。


あたしはドアの陰で待っていようとしたんだけど。



「…ちょっとハル!なに隠れてんのよ!!」


ドアの向こうから急に現れた百合に手を引っ張られ、結局部屋に足を踏み入れる羽目になった。



「先生!この子がもうひとりの英語係です。ハル、挨拶」


挨拶って言っても昨日したばっかなんだけどね。


なーんて心の中で考えつつ。



「……篠塚悠です」


初めて顔を上げてると、槻嶋と目が合う。



こいつ…目の奥で笑ってる。


やっぱり最低。



「初めまして、よろしくな」


なーにがよろしくな、だよ。



「…じゃあ、明日は教室で授業だから」

「はい、わかりました!!」

「終わった?じゃ行こう」


結構景斗待たせちゃったなー。
怒ってないといいけど。

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