先生とあたし(仮)
景斗が軽く謝って今日の夕飯、カレーの材料をどんどんキッチンに出していく。
「でもなんかいいよね」
「何が?」
制服の上からエプロンを着けて料理のできる服装にチェンジする。
これで準備は万端。
「なんか俺ら結婚したみたいじゃん?」
「はあ?何バカなこと言ってんの」
「新婚みたいで楽しい」
景斗がニコニコ笑いながら、野菜を洗う。
景斗と一緒にいるとたまに付きあってた頃のことを思い出す。
あたしの家で料理をしている景斗を見るのが好きで。
あたしはいつもリビングから景斗のことを見ていたっけ。
「…懐かしいな」
「え?」
「何でもない」
手を洗うと景斗の指示通りに野菜を切り始めた。
「ちょ…、親指!」
「へ?」
「みじん切りはそうじゃなくて…」
「えー?」
「もうちょっと薄くしないと…」
「……」
普段包丁なんて持たないから、全然上手くいかない。
さっきから景斗に注意されっぱなしだ。
「やっぱりあたしに料理なんて無理だよ」
3センチはあろうかという人参をひとかけらつまむとため息がでた。
「始めから上手くいくやつなんかいねーって。
俺が絶対できるようにさせてやるから」
そう言ってあたしの頭をポンポンする。