先生とあたし(仮)

「相変わらず色気がないなあ、悠は」


手を引っ張られたあたしは景斗の膝の上に横座りの状態になる。


「…う、るさいな!トイレ行くんだから離して!」

「無理。悠が変なこと聞くから」

「変って……」

景斗の顔が近いから恥ずかしくなって、慌てて顔をテレビの方に逸らす。


「こっち向けよ」

右手をあたしの腰に、左手を後頭部から左の頬に回して景斗の方に無理やり向けさせられる。


景斗の瞳の中にあたしが映っているのが見えた。


「あのな、ああいうこと言われたら男は俺に気があるのかな、とか思っちゃうわけ」

「…別にあたしは、」

あたしの言葉を景斗が遮る。

そして景斗はうつむきながら続けた。



「わかってるよ、そんな気がないことくらい。ただ、他の男に向かってそういうこと聞くな」


景斗の右手に力が入って、あたしの体が景斗の方に近づく。


「…みんながみんな俺みたいじゃねえんだぞ?」



景斗?



うつむいた景斗の表情はこっちからは髪に隠れて見えない。


体を移動させて顔を覗こうとすると、景斗がいきなり顔を上げたからビックリしてしまった。
と同時に手の力も弱まる。


「これだから男経験が少ないやつは困るよな~」


「あ…あんただってないでしょうが!!」


手の力が弱まったのをいいことに、あたしはさっさと立ち上がってトイレへと向かった。


百合の言ってたことが本当なら景斗だってあたししかないのに!!

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