先生とあたし(仮)
あたしは目を逸らして窓の外に目を向ける。
百合と槻嶋の会話を特に聞くこともなく、ボーっとしながら立っていた。
「―――ってわけだから、ハルよろしく!!」
「へぇ?」
不意に肩に置かれた百合の手があたしの意識をこっちに戻す。
「ちょっと聞いてなかったの?だからあんたってやつは…」
まずい。百合の小言攻撃のトラップにはまってしまったみたいだ。
「あーもうごめんって!!」
百合の小言を遮りながらあたしは止める。
槻嶋はというとそんなあたしを見てニヤニヤしていた。
「今日の放課後、あたしバイトがあるから二人でプリントの準備してってこと」
百合はまだ少し小言を言いたそうな顔をしながらも、さっきの言葉の説明をしてくれた。
でもまさか…
「二人って…」
「俺とだよ」
やっぱりお前かー!!
槻嶋に目を向けるとあいつの目はパソコンに向いていてあたしと目が合うことはなかった。
「職員会議があるから先に始めててくれよ」
「あたし一人でも大丈夫ですけど」
あんたと一緒にやるくらいなら一人でやった方が絶対にまし。
「いや、それじゃあ俺が不安だから。篠塚適当にやりそうだし」
………。
ほんとにムカつく!!
一言多いのわかんないのかな。
ずっとパソコンに目を向けて作業をしている槻嶋を一睨みすると、
「わかりました!放課後に来ればいいんですよね!」
それだけ言って英語科準備室を飛び出した。