先生とあたし(仮)
あたしは今までのことを全部景斗に話した。
始業式のことも。
引っ越しの挨拶のときも。
でも恥ずかしいからキスのことは言えなかった。
「もっと早く言えよ」
「ちょっと…」
ソファーに座る景斗に引き寄せられて抱きしめられる。
「あのさー、もっと俺のこと頼ってくれてもいいんじゃないの?
俺そんなに頼りない?」
景斗の切なそうな声が耳元で響いて、体が微かに震える。
「そんなこと…ないよ」
景斗のこと、一番頼りにしてるってほんとは知ってるでしょ?
「まあ悠のことだから言えなかったんだろうけど」
あたしのことを自分の体から引き離すと景斗はあたしの目をじっと見つめて頭をポンポンとした。
「でも引っ越した方がいいんじゃねーの?
他の奴らに知られたら厄介だし」
「ダメだよ!引っ越したいなんて言ったらあっちに行かなきゃいけなくなるかもしれないし」
なにげに心配症なところがある両親。
そんなことだから、きっとあたしが引っ越したいなんて言った日には、何かあったと勘違いして自分たちの手元に置きたがるだろう。
あたしの英語力云々なんて言うのは、全く関係なしに。