先生とあたし(仮)
まあ、あたしは楽しければなんでもいいんだけどね。
とりあえず修学旅行を楽しく過ごすためにも(イケメンが一緒なら百合たちも文句言わないだろうし)、あの二人には犠牲になってもらうしかない。
こんな言い方したら申し訳ないんだけど。
百合たちの押せ押せ攻撃が成功しますように、とあたしは心の中で祈った。
のだけど。
そんな心配はいらなかったようで、班決めの時間になると木村くんと真田くんはあたしたちの元にやってきた。
「同じ班になろーよ」
木村くんの人懐っこい笑いはあたしを除く三人のハートをぶち抜いた。
おお…後ろからのクラスの女子の視線が痛いよ。
「いいけど、さっき誘われてた子たちはいいの?」
そう、あたしたちの元に来る前に彼らはこのクラスの女子から大多数の申し込みを受けていたのだ。
それを断ってまでここに来るメリットって…ああ、百合がいたか。
「うん、景斗に篠塚さんのこと頼まれてて」
「え?景斗?」
なんでここで景斗の名前が出てくるの?
一人で首を傾げているあたしに対して他の五人はうんうんと頷いている。
「…?」
「とりあえず、よろしくね!あ、俺のことは隼人でいいから!」
そう言ってもう一回にっこり笑う。
ま、いっか。
これで修学旅行中の百合の機嫌は確保されたわけだし。
「真田くんもよろしくね」
隼人の隣りに立つ真田くんにも挨拶をする。
「ん、よろしく」
こっちはニコリともしないでそれだけ言った。
うん、やっぱり真田くんてよくわかんないや。