先生とあたし(仮)
「はあー…」
ためいきをついて、手にしていたシャープペンを机の上に転がす。
教室には放課後のおしゃべりを楽しむ女子と教室内でふざけている男子のグループのほかには人は残っていない。
百合は合コン、有美と瀬奈は部活でとっくのとうに姿を消していた。
「こんなの終わんないよー」
弱音を吐いて机の上に広げられたノートを見つめる。
提出範囲だった部分は10ページ分もあった。
テストが終わった瞬間にこんなに課題を出すなんて、やっぱり槻嶋は鬼教師だ。
ていうかドSだな、うん。
でもこれ提出しておかないと成績に響くだろうし…。
他の教科だったらまだ成績に余裕があるから無視できたのに、英語なんてアヒルが着く恐れがある。
無視はできない。
ペンを持ちなおすと課題に取り掛かり始めた。
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日は傾き始めていた。
やっと終わった課題を見つめながら大きく伸びをする。
関節という関節がポキポキと音を立てた。
「うわ、もうこんな時間なの!?」
教壇の上に掛かる時計に目をやると、短針は6を過ぎていた。
教室も薄暗いわけだ。
電気をつけに席を立ったついでにベランダに出る。
風が気持ちいい。
校庭を見下ろすとサッカー部が部内ゲームをしているのが目に入った。
景斗が元気よく走りまわるのを見て、思わず口元がほころぶ。
景斗も頑張っているし、あたしももうひと頑張りだ。
自分にひとつ喝をいれて教室の中へ戻る。