先生とあたし(仮)
プリントが終わる頃には窓の外は深青へと姿を変えていた。
「終わったーっ!!」
全身の力を思いっきり抜いて誰もいない教室で歓喜を上げる。
頭がオーバーヒートしそうだ。
いや、もうしているのかもしれない。
とにかく帰りにコンビニに寄って、最近お気に入りのキャラメルミルクティーチョコを買って帰ろう。
百合や景斗に見つかったら糖尿病になっても知らないから、と言われかねないけど。
荷物をまとめて課題をしたノートとプリントを手に持つと2棟に足を進めた。
夜の学校は不気味だ。
この学校に七不思議があるなんて噂は聞いたことがないけれど、それでも薄暗い廊下は何かいるのではないかという気を引き起こすには持もってこいだ。
早く提出してさっさと帰ろう。
足早に2棟の英語科準備室の前まで来ると乱暴にノックして、返事も聞かずに入った。
「しつれいしまーす、課題の提出に来ました」
「おお、やっと終わったか」
机の向こうから眼鏡をかけた槻嶋が顔を覗かせる。
普段はコンタクトなのだろう、槻嶋の眼鏡姿は初めて見た。
「これ」
終わった課題とプリントを槻嶋に差し出す。
我ながら人の助けも借りずによく頑張ったと思う。
「…ふーん、やればできんじゃん」
パラパラとノートを捲って課題を確認する。
「じゃ、さよなら」
クルリと後ろを向いて準備室を出ようとすると、手にしていたカバンに引っ張られて後ろを振り返る。