先生とあたし(仮)
「ちょっと待て、もう暗いから送る」
「…は?」
「だから、危ないだろ。
春になって露出狂とか変なやつらも多いしな」
そう言いながら本当にあたしを送るつもりなのだろう、帰り支度を始めた。
「そうだ、これ」
机の上にあったコンビニの袋から何かを取り出すとあたしに渡す。
「…キャラメルミルクティーチョコ」
帰りにあたしがコンビニで買おうと思っていたものだった。
「あんたも好きなの?」
「あ?ああ、他のやつらは甘すぎとか言うけどな」
そう言って槻嶋は苦笑いをする。
「だよね、これちょーおいしいよね!!」
「お前も好きなの?この甘さがいいんだよな」
ビックリしたようにあたしの方を見ると、屈託のない笑顔を向ける。
ドキン。
まただ。
槻嶋の笑顔に心臓が反応した。
黙ってしまったあたしを余所に、槻嶋はチョコの話を続ける。
…頭が疲れてるから、心臓が反応したんだ。
英語の拒否反応、そう拒否反応以外の何物でもないんだから。
「おい、なにボケっとしてんだ。
置いてくからな」
かけられた言葉にハッとしてカバンを持ち直して準備室をあとにした。