先生とあたし(仮)
翌朝、教室に入るといつも以上にざわついていた。
原因はテスト範囲の発表にあるということはわかっていたけど。
不満の声や案外範囲が少ないという喜びの声がチラホラと聞こえてきた。
「ハル、おはよ」
人だかりの中からちょうど出てきた百合があたしの席に寄ってくる。
顔は若干青くなっている。
そんなに範囲広かったのかな。
「テスト範囲写したの?
見せてー」
百合に見せてもらえば、わざわざあんなに混んでいるところに行く必要はない。
百合の差し出した手帳を受け取って、まず初めに英語の範囲を確認する。
「…ドS!鬼畜!!悪魔!!」
英語のテスト範囲に絶望した。
期末の倍以上になっている。
なに!?あたしが授業を聞いてないうちにこんなに進んだの!?
これでも中間テスト前よりは聞いてた方だと思うんだけど。
…理解しているかどうかは別として。
「英語なんかまだいいわよ、あたしにとっての問題は日本史と化学なの!!」
確かに範囲は広い。
中間テストをしていないだけの分はある。
あたしは脱力しながら手帳にテスト範囲を写す。
日本史は好きな科目だし、授業でしっかり理解しているから心配はない。
化学も見た感じ問題はないし、他もこれといってヤバい、というのは見当たらない。
…でも英語は―。
「まじでいいかげんにしろよー槻嶋ー」
「大丈夫よ、ハル。
槻嶋先生の問題って基礎問題8割の応用が2割って感じだから」
百合は死相を浮かべながらも親指を立てて無理に笑って見せた。
百合さん。
あたしにとってあなたの基礎問題は応用だってこと、忘れてないかい……。