旦那様は社長 *②巻*
あたしは捨てられた。
……騙された。
『愛されてなんかいなかったんだーー…』
全部、あたしの勘違い。
自惚れ。
婚約者も未来も一度に全て失ったあたしは、何もかもがどうでもよくなって。
ただ毎日を泣いて過ごした。
……鳴らない携帯を握りしめて。
もらった指輪も外せないまま、ただ悪戯に時間だけが過ぎていく。
『……っく……っ……』
どんなに泣いても、止まることを知らない涙。
拭っても拭っても、次から次へと溢れだす。
まるで、あたしの敬吾への想いのようにーー…
あたしの敬吾への想いは、時間の経過と共にどんどん大きくなった。
こんなに酷い仕打ちを受けても。
思い出すのは、あたしの隣でいつも優しく笑っていた……明るい笑顔。
あたしは笑ってる敬吾が大好きだった。
あの笑顔だけは……嘘じゃなかったって信じたい。