旦那様は社長 *②巻*
「はああ……うちの会社……あんな人が副社長で大丈夫なわけ?」
誰もいない社長室で、思わず本音が漏れる。
でも確かにいい加減な性格だけど、仕事は早いし正確だし……“仕事”だけを見れば、納得……かな。
藤堂さんについて思考を巡らせていると、本当に頭がフラフラしてきた。
「やばっ、気持ち悪っ……」
あたしはそのままソファーに倒れ込んだ。
安定期に入るまではまだずいぶん先。それまであたしは、この苦しみに耐えられるのかな?
世の中の、子供を持つお母さんたちは皆この苦しみを乗り越えてきたんだよね……。
本当に強いよ。
あたしは大丈夫かな?
……耐えていけるかな?
「赤ちゃん……ママ頑張れるかな?赤ちゃんも今……頑張って生きようとしてくれてるんだよね?」
そっとお腹に手を当てて、赤ちゃんに話しかけた。
“頑張らなきゃ”
そう何度も何度も自分に言い聞かせる。
ーーその時。
トントンと社長室のドアをノックする音が聞こえた。
藤堂さんかな?と思いながら「はい」と返事をすると、社長室のドアが開かれた。
ーーバタン
入り口を背にしてソファーに横になっていたあたしには、誰が入ってきたのか分からなかった。
「藤堂さん?もう戻ったんですか?」
でも返ってきた声は、藤堂さんのものじゃなかった。
「オレ……」