旦那様は社長 *②巻*
その声に、反射的に体が反応する。
あたしは慌てて体を起こし、ゆっくり振り返ると、入り口に佇む彼と目が合った。
「光姫……」
この人に名前を呼ばれたのは、何年ぶりなのか。
とても懐かしく感じる。
封印した過去だけど、あたしは嫌いで別れたわけじゃない。
……本気で愛した人だった。
あの時、結婚したい……これからもずっと一緒に生きていきたいと、心の底から思ってた。
でも……あたしは捨てられたんだ。
今更、あたしの今の幸せをめちゃめちゃにされたくない。
そんな権利、この人にはないんだからーー…
「驚いた……まさかあなたが、この会社で働いていたなんて……」
「……だろうね。転職したのは1年前だから。それにオレも驚いたよ、まさかキミが有栖川の社長夫人になっていたなんてな……」
「お陰様で。あなたと結婚しなかったおかげで、今の幸せがあるの。
……あなたには感謝しなきゃね?」
面白いくらいに、ポロポロと言葉が口をついて出てくる。