旦那様は社長 *②巻*
「どうして黙ってるの?……悔しい?昔捨てた女が、今や自分よりも立場が上になって、おまけに玉の輿にのって幸せになってることが」
「……捨てたわけじゃないよ」
「……は?」
「だから、オレは光姫を捨てたりしてない」
「……何……言ってんの?」
捨ててない?
なんて、一体どの口が言ったの?
あたしの顔はますます険しくなり、敬吾はそんなあたしを真っ直ぐ見つめ返してくる。
……分からない。
敬吾が何を言っているのか、まったく。
「オレは、光姫を捨てたつもりはなかった。これだけは本当だよ」
「嘘よ!だってあの時、ごめんって……婚姻届だって、破り捨てたくせに……会社だって、嘘だったじゃない!!」
敬吾の前で泣きたくなんかなかった。
今の幸せだけを見せつけてやりたかった。
“あの時、あなたと別れたおかげ”
昔捨てたはずの女が、自分より高い社会的地位と最高の伴侶を見つけて幸せになっている姿を目の当たりにして。
少しでも悔やめばいい。
……そう思ってた。
それなのにーーー……