旦那様は社長 *②巻*
それなのにどうして?
どうして今になって、あたしを惑わすようなことを……。
「光姫、オレは本当にお前を愛してたよ。一生一緒に生きていきたい、本気でそう思ってた。でも……」
「でも、あなたはあたしを捨てた」
止めてよ今更。
言い訳なんてしないで。
あなたはあの日、確かにあたしを捨てたんだから……。
「……違う。オレは今でも光姫を愛してる。別れてからもずっと、お前だけを想って生きてきた」
「よくもそんな嘘を……っ。敬吾はただ、幸せを掴んだあたしが気に食わないだけ……自分より幸せなあたしが許せないんでしょ!?
……だからあたしを混乱させて、弄ぼうとしてるの!?」
はあ…はあ……と、一気にまくし立てたせいか、呼吸が乱れ、少し息苦しくも感じる。
「光姫、とりあえず少し落ち着こう?あまり興奮すると、お腹の赤ちゃんにも悪影響だよ」
あたしの肩に乗せられた手をパシッと勢いよく払いのけると、敬吾の顔が瞬時に歪んだ。
でも、そんなの知らない。あたしは呼吸を整えると、冷静に敬吾を見据えた。
「触らないで。誰のせいで興奮してると思ってるの?」
「……そんなにオレが憎い?」
「ええ。あなたの顔を見てると、怒りがどうしても抑えきれないの」