旦那様は社長 *②巻*
それからお互い、離れていた間の出来事を報告しあった。
敬吾と敬吾のご両親は、最後まで会社復興を望み努力したものの、多額の負債を返上することはできずに結局自己破産の道を選んだらしい。
代々受け継いできた会社を手放すことがどうしてもできず、苦渋の選択だったそう。
ご両親はすっかり生きる気力を失くしてしまったものの、やっと最近になって第二の人生を夫婦2人で歩んでいこうと沖縄に移り住み、畑を耕して農作物を作っているんだと嬉しそうに話してくれた。
あたしも悠河と結婚したいきさつや、お腹に子供ができた時のこと、敬吾と別れてからどうやって過ごしてきたのかを笑って話すことができた。
「有栖川の会長ってスゲーな……」なんて苦笑いしていたけど。
2人で笑顔でこうして再び向き合うことができて、本当によかったと何度も心の中で思った。
「悪かったな。こんな時間まで引き止めちゃって」
「ううん。敬吾のこと、あたしの中でずっと悪者にならなくてよかったよ」
「そっか。でも社長、大丈夫か?」
「何が?」
「もう帰ってる時間かな?」
時計を見ると、午後9時を指していた。接待の時は、いつも10時を過ぎなければ帰ってこない。
「大丈夫。まだ間に合うから」