旦那様は社長 *②巻*
■第8章■素直な気持ち。
「あれ?おかしいな、明かりがついてる……」
敬吾と別れてタクシーで帰宅したのは午後9時半。
悠河が帰ってくるまでにお風呂に入ろうと考えていたのに、玄関を開けると既にリビングに明かりがついていた。
……まさか、こんな時間にもう帰ってる?
恐る恐る目線を下に移すと、玄関には悠河の靴がしっかり並んでいた。
「ウソ……」
本当に帰ってる。
別に後ろめたいことは何もないけど、何故か胸がドキドキしてくる。
妊娠してから寄り道禁止を言い渡されていたあたしは、納得させられる理由を考えなきゃいけなかった。
靴を脱いでリビングに向かうまでたっぷりと時間をかけたけど、頭に浮かぶ理由なんてどれも子供だましで……。
リビングのドアノブに手をかけた時、素直に怒られる道を選択した。
「お帰り。遅かったんだな」
入った瞬間、ソファーに座る悠河と目が合って、思わずたじろぐ。
「た、ただいま」
不自然に声が震えて、余計に焦ってしまう。
「どこ行ってたんだ?」
「え?」
「寄り道するなって言っただろ?」
「……」
悠河がもの凄く怒っているのが分かった。
本気で怒った時、悠河はいつもあたしを見ない。
声を荒げるわけでもなく、ただ静かに……ゆっくりといつもより低い声でジワジワと攻めてくる。