旦那様は社長 *②巻*
「社長。明日の一條財閥主催のパーティーですが……私も同行して宜しいですか?」
「え?」
「秘書としてではなく、妻としてご挨拶すべきかと」
悠河は少し黙り込んだまま手元の書類をめくった。
「……社長?」
最近、悠河の様子がおかしい。
こんなに近くにいるのにものすごく遠い所にいる人のような、心の距離を感じる。
妊娠する前にすれ違った時とはまた違う……距離感。
そう感じ始めたのは、あの日から。
敬吾と和解したあの日。
いつまでも答えをくれない悠河に痺れを切らせた時、ボソッと呟く声が聞こえた。
「光姫は行かなくていい。パーティーには慎也に来てもらう」
こっちを見ようとしない悠河にイライラしてくる。
「……どうして?」
この“どうして”には、『どうしてこっちを見ないの?』と『どうしてあたしじゃなく藤堂さんなの?』という気持ちが込められている。
「あー…、悠河は光姫ちゃんの体を心配してんだよ」
いつの間に社長室に入ってきたのか、藤堂さんが歩いてきた。
「あたしの……体?」
「お前は悪阻もあるし、パーティー中に気分でも悪くなったら、せっかくのパーティーも台無しだろ?」
「……」
悠河の言葉に優しさを感じられないのは気のせいなのかな?