旦那様は社長 *②巻*
「まーたお前はそんな言い方して。素直に、光姫ちゃんが心配だから家で待ってろって言やーいいだろ?」
やれやれと、藤堂さんが苦笑しながら悠河に近づいて行く。
「うるせー、大きなお世話だ。明日は大事なパーティーなんだよ。慎也、お前だって分かってんだろ?光姫の心配してる暇はないからな」
「……別に心配してくれなくていい」
「み、光姫ちゃん?」
駆け寄ってきた藤堂さんの手を思わず叩(はた)いてしまった。
「あたしだって自分の体調くらい分かってる。気分悪くなっても上手く誤魔化せるわ」
あたしはただ、悠河の役に立ちたいだけ。
妻としての役割を果たしたいだけ。
秘書として全く役に立てていない今、せめて妻として悠河を支えたいだけなのに……。
「一條の奥様にも、ちゃんとご挨拶したいの。式の時にほとんどお話できなかったし。……それに、これからビジネスパートナーとして一條家と深く関わっていくなら、女の力も必要よ」
悠河は静かにあたしを見つめて、たった一言言い放った。
「勝手にしろ」
悠河の目も言葉も、醸し出す雰囲気も全てが冷たくて、居たたまれなくなったあたしはそのまま社長室を飛び出した。