旦那様は社長 *②巻*
「苦しいか?」
「え……」
「オレの側にいるの、……そんなに苦しいか?」
「悠……河……?」
悠河の瞳が揺れているのか、あたしの瞳がそうなのか分からない。
「オレはお前に子供を生ませるために結婚したわけじゃない」
「でも……」
「ああ。……結果的には生んでもらわなきゃいけない」
「……」
「それが有栖川の人間になることだから」
これからも悠河の側にいるためには避けては通れない、高くて強硬な壁。
また……
壁にぶち当たる日がすぐにやってくるんだろうか。
大きく深く刻まれた2人の傷が癒える前に……。
「オレは必ず有栖川のトップに立つ。その条件が子供であるなら、……やっぱりお前に生んでもらうしかない」
「……」
「だけど、ただの夫としては……お前の命を削るようなことはさせたくない」
「……悠河」
「今回みたいなことはもう……二度と──」
複雑な悠河の心の葛藤。
結婚する前から、有栖川を背負って立つと宣言していた悠河。
だけどこんなにも心を痛めている。
彼もまた、あたしと同じように“有栖川の壁”に縛られて、必死にもがいているんだ……。