旦那様は社長 *②巻*
有栖川の血を引き、会長の孫である悠河が一族を背負ってたつことは当たり前のことだと思っていた。
だけど、さすがは名家の家柄。
その人間関係はとても複雑で、悠河を失脚させようとする人も一族の中にはいるのだと、以前聞いたことがある。
それが大事にならないのは、現会長が圧倒的な権威を誇っているからだ。
その会長が健全なうちに、出した条件さえクリアすれば、空気を乱すことなく悠河はトップに立てる。
あたしは悠河の足手まといになりたくはない。
守られるだけじゃなく、悠河をどんな風からも守って、支えて生きていきたい。
そうだ……
以前もあたし、そうしようと決めたはずなのに……。
「悠河」
「ん?」
「悠河がどんなにあたしを想ってくれてるかあたし……分かってるよ」
「光姫?」
「だけど、今のあたしは……次の赤ちゃんのこと、……まだ考えられない」
悠河はフッと悲しそうに微笑んだ。
「……当たり前だ。オレだって──」
失った命。
この世で一番大きな苦しみ、哀しみ。
それは時間の経過とともに、どんどんあたしたちの心の中で肥大化していく。