旦那様は社長 *②巻*
「あなたの言う通りね。私自身、こんな男の妻であることを後悔したわ。昔から女にだらしのない男だったけれど、ここまでバカな男だとは思わなかった」
溜め息混じりにそう言ったタマコさんは、今度は会長のおでこを正面からペシッと音を立てて叩く。
『あッ』
心の中で声をあげる。
何度も叩かれているのにジッと耐えている会長を見ると、さすがのあたしも可哀想に思えてきたんだ。
『もうそれくらいに……』
そうタマコさんに言い出しそうになった時、それを察したのか悠河があたしの手を強く握り締めた。
「え?」
悠河の顔を見上げると、横目にあたしを見ながら“止めるな”と言っているようだった。
そんなあたしたちを見てタマコさんも言う。
「いいのよ、光姫さん。こんなのはまだ甘い方なんだから。悠星があなたに言ったことの方がよっぽど大きな痛みを伴うわ。あぁ!腹立たしい!昨日もっと引っかいてやればよかった!!」
今の一言で全てが繋がる。
会長の絆創膏の理由。
それは、タマコさんの引っかき傷なんだ。
絆創膏から少しはみ出して見える赤い痕が痛々しい。