旦那様は社長 *②巻*

「ところでタマコさん。会長が光姫に詫びると言うのは、会長の本心からなのでしょうか?」


「どういう意味?」


「タマコさんに言われたから謝る気になったのであれば、いくら謝罪の言葉を並べたって光姫の心は救われません。会長が自分の失言を心から後悔して、心の奥底から“謝りたい”と思わなければ、なんの意味もないんです」



“意味がない”


キツイ言葉のようだけれど、確かにその通りかもしれない。


上っ面だけの優しいキレイな言葉をどんなにたくさん並べたって、きっと誰の心にも響かない。


どんなにしどろもどろでも。

どんなに言葉足らずでも。


心に共鳴して発せられる素直な言葉が、人の心を動かすんだ。



「もしも会長が“言わされている”のであれば、これ以上何も言わないで下さい。光姫がよけいに傷つく。このままそっとしておいて頂きたい」





「私は……」


ずっと俯いていた会長がゆっくり顔を上げながら、何か言おうと口を開く。


そしてあたしと目が合った瞬間、続きの言葉をグッと呑み込み、救いを求めるようにタマコさんに視線を移した。


だけどタマコさんが救いの手を差し伸べるはずがなかった。


「ご自分でどうぞ。悠河の今の言葉が聞こえなかったの?」


「いや……」


か細い声が微かにあたしの耳に届いた後。



「か、会長!?」


次の瞬間あたしの目に映ったのは、有栖川グループにおいて絶対的な権力を持つあの会長が、床の上で土下座をしている姿だった。


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