旦那様は社長 *②巻*
-------------------
---------------


「ところで悠河。あなたたちは今日ゆっくりできるの？久々に、夕食でも一緒にどうかしら？」


和やかに笑うタマコさんに、あたしも涙を拭いて頷こうとした時、


「その前に、大切なお話があります」


悠河の声が低く耳元で響いて、あたしは大切なことを思い出した。


会長があたしたちに謝罪するなんてことまったく想像もしていなかったから、ここへ来た本当の理由を忘れてしまうところだった。


悠河が会長とタマコさんに深く頭を下げて言ったのは、あたしたちの将来を大きく変えることになるかもしれない重要な内容。


「年内に光姫が子供を授かるように……という会長からのお言葉でしたが、今の私は何よりも、光姫の身体の負担、精神的負担を取り除いてやりたいと考えています。……だから私は、今すぐ子供を作る気はありません」


バカな悠河……。


それはあたしの口から言おうと思っていたのに。


今度はあたしが、悠河を守る番だったのに。


けっきょくいつだってあたしは、こうして悠河に守られてばかりいるんだ。


「一人で、悪者にならないでよ」


顔を上げた悠河に微笑み返して、続きの言葉はあたしから会長とタマコさんへ伝えた。


「今彼が言ったことは、彼の本心であって、本心じゃありません」


「え？」


「彼はいつも、自分のことより私のことを第一に考えてくれる人。だから、今の私を守ろうと必死で、私にとって少しでもストレスになるようなことは全て取り除きたい。そう思ってくれているのは、確かに彼の本心です」


会長とタマコさんが困惑気味に顔を見合わせた。


悠河までもが不安げにあたしの名前を小さく呼んだ。


< 391 / 409 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop