旦那様は社長 *②巻*
「悠河の祖母としてずっと心配していたの。悠河はどうも昔から冷めてるところがあって、本当に幸せになれるんだろうかって。光姫さんとの結婚が決まった後も、実は私は心配だった。両親を早くに亡くした悠河に、“結婚”ってものがちゃんと分かるのかしらって。……だけど、不要な心配だったみたいね」
いつだったかな。
悠河が小学生の時に両親を事故で亡くしたと聞いた時、そんな小さい時に一人ぼっちになってしまった悠河を可哀想だと思ったことがあった。
両親を失ったことは確かにこの上ない悲しみ。
だけど、悠河は一人ぼっちなんかじゃなかった。
悠河の側にはちゃんと、優しくて深い、大きな愛があったんだ。
今まであたしは、有栖川一族は自分のことしか考えない人の集まりなのかと思っていた。
なんに対しても、ものさしは自分。
孫でさえも、自分にとってはただの駒。
そこに愛情はあるのかって、ずっとあたしは疑問だった。
そんな一族に足を踏み入れたあたしの未来はどうなるの?
そんな一族の間に生まれるあたしたちの子供はどうなるの?
常にそんな不安の渦に呑み込まれそうになっていたあたし。
だけど今日確かに愛に触れて、本当に心から有栖川一族の人間になりたいと思った。
「私、これからも彼の側にいて……いいですか?」
「当たり前じゃない!悠河の妻が務まるのは、光姫さん以外にありえないわ!!」
ホッとして涙が零れたけれど、気になることが一つある。
「でも私、子供は……」
そう言いかけた時、タマコさんの口から意外な事実が飛び出した。