旦那様は社長 *②巻*
「本当にどうしようもない男だったけれど、私は確かにこの人に愛されていたから」
「あ、あ、当たり前じゃ」
会長が顔をぐしゃぐしゃにして泣いているのを見て、笑ってはいけないところなのに思わず笑ってしまう。
「悠星があなたたちに曾孫が今すぐ見たいと言ったのも、私が本当に危ない状態にあったからだと思うの。だけど私、まだ簡単には死なないから!だから、あなたたちのペースでいいのよ。むしろ、子供なんて生まなくてもいいんだから」
「え!?」
「何を言う!タマコ!」
会長が元気を取り戻してタマコさんに噛み付くと、タマコさんはもう一度会長のおでこを指で弾いた。
「誰が喋っていいと言いました?」
ギロリとタマコさんに睨まれ、会長の身体がシュンと一気に縮まる。
やっぱりタマコさんが最強権力者なんだ……。
「あなたも昔、同じことでお父様に盾ついたことがあるじゃありませんか」
「そ、それは……」
「もう時代は変わったんです。これからの有栖川を作っていくのは、悠河たちですよ」
そう言うと、タマコさんは立ち上がって部屋を出て行ってしまった。
そしてほんの数十秒後。
タマコさんは、いつかあたしが会長に見せてもらった大きな箱を手に戻ってきた。
忘れもしない。
それは恐怖の……
「巻……物……」