旦那様は社長 *②巻*
「あれ?光姫ちゃん?」
「やっとお目覚めですか?」
藤堂さんの身体に倒れこんだままそう聞くと、藤堂さんが首を傾げた。
「オレ、襲われてる?」
「そんなわけないじゃないですか!!」
自分からあたしを(他の女と間違えて)引き寄せておいて!
「はは、そうだよねー」
相変わらずあたしと話す時は語尾を少しのばし目に話す藤堂さん。
なんだか本当にこの人だけは憎めなくて溜め息をはいた時。
「何やってんだ、お前ら」
ものすごく負のオーラを纏った声があたしの背中に突き刺さる。
「ゆ、悠河」
変な冷や汗がタラタラと流れてくる。
それなのに藤堂さんは何も気にすることなく「よっ!悠河」なんて爽やかに笑っている。
悠河がそんなあたしたちに一歩、一歩と、地面を震わせながら近づいてきた。
「ゆ、悠河!これはね?あのね、違うの!浮気とか、ほんとそんなんじゃないから!」
「オレは光姫ちゃんとなら不倫してもいいけどな」
「藤堂さん!?」
余計に話をややこしくするのがこの人の特技なんだろうか。
あわあわしていると、悠河にひょいっと身体を持ち上げられた。
「え……」
それはまるで、小さな子供のように。