旦那様は社長 *②巻*
「光姫。会議の準備はできているのか?」
「はい。後はこの資料をセットアップするだけです」
デスクの上に束ねてある30部の資料を持ち上げ、歩き出そうとした時。
「……ッ」
足がもつれてこけそうになったのを悠河に抱きとめられた。
「ご、ごめんなさい」
顔を赤くするあたしの耳元で、悠河がボソッと呟く。
「腰砕け?」
「えッ!?」
「今日の夜はもっと激しいやつ、する?」
ニヤリと笑う悠河は、さっきの情事ですっかり機嫌を取り戻していた。
「し、しません!」
「ふーん、そう」
「な、なんですか!?」
「さっき、気持ちよさげだったけど?」
ふふんと笑う悠河の頬に、あたしの強烈パンチが飛ぶ。
「お前、女が手を出すなっていつも言ってるだろう!!」
「手を出されるようなことしなければいいでしょう!?」
「なんだと!?」
後から聞いた話によると、実はさっきの情事中、あたしの声は社長室の外まで筒抜けだったらしく。
用事があって通りかかった敬吾は、扉によりかかって悶々としていたそうだった。