旦那様は社長 *②巻*
有栖川家に嫁いできてから、こんなに穏やかな毎日を過ごしたことがあったかな。
信じられないくらい、あたしたちは幸せだった。
そして今日は、美姫の月命日。
あたしと悠河は午後会社を休んで、美姫のお墓に来ていた。
だけどもう既にキレイな花が活けられていて、側にはまた1つ、小さなテディベアが増えていた。
「会長とタマコさんかな」
「だろうな」
あたしと悠河も花を活けて、二人で美姫に話しかける。
「美姫、元気にしてる?そっちでお友達、たくさんできた?」
「美姫はママに似て美人だろうから、男がウジャウジャ寄ってくるだろ」
「美姫は赤ちゃんだよ?何言ってんの?」
ふっと笑う悠河の腕に自分の腕を絡ませて、しばらくお墓をずっと見つめていた。
悠河は今、どんなことを思っているんだろう?
どんな内緒話を美姫としてるの?
想像しているだけで、自然と優しい気持ちになれた。
「ねぇ、悠河」
「ん?」
「赤ちゃん、ほしい?」
「え……」
悠河の言葉が詰まる。
「昨日ね、帰りに産婦人科に行ってきたの。今までは赤ちゃんを抱いてるママたちを見てるだけで辛かったのに、あたしね?笑ってた。赤ちゃんがあたしを見て、ふにゃって笑ったの。それを見てあたし、自然と笑ってた」
「光姫……」
「やっぱりあたし、いつか悠河の子供を産みたいな」