旦那様は社長 *②巻*
「光姫、そういうわけだから、来週の食事会はもう一度スケジュール調整を頼む」
「……はい」
「それじゃあ塩塚さん、今日はわざわざ足を運んでくれてありがとう」
有栖川と取引のある塩塚商事の社長。
今日は定例の社長会談が行われて、塩塚さんが有栖川まで足を運んでいた。
と言っても、主導権を握るのはもちろん有栖川。
会談が終わると、社長に頭を下げて塩塚さんは秘書と一緒に社長室を後にした。
ーーパタン
扉が閉まったと同時に、あたしはコツコツとヒールの音を立てながら社長に近づく。
「社長、お客様の前で私を名前で呼ばないで下さい。申し上げたはずですよ? 葉山と呼ぶようにと」
結婚を公表してから社長は、いつどんな時でもあたしを「光姫」と呼ぶようになった。
そして……
あたしはそれが不満で堪らない。