旦那様は社長 *②巻*
「いいだろ、別に名前なんて。そんなの誰も気にしちゃいねーよ」


「気にするとかしないとか……そういう問題じゃないんです!!」


「じゃあ何だよ?」


「公私混同しないでほしいんです、私は。いくら夫婦でも仕事上は上司と部下なんですよ?」



前にも言ったはず。


あたしは仕事は仕事って区別をつけたいの。




「なんだよ、お前頭固すぎだろ。呼び方なんて誰も気にしちゃいねーよ」


「それでもイヤなものはイヤなの!!」



名前で呼ばれると、あたしが秘書としての自覚を忘れちゃうの!!



……つい、家にいるみたいに「悠河」って呼んでしまいそうになる。



それが人前であっても。





でもそんなこと、秘書としては失格だもの。



今日みたいにお客様がいらっしゃった時、いつものように振る舞っていたら……



“有栖川の社長”としての威厳がなくなってしまうような気がしてーー…



“仲良し家族経営”なんて思われたくない。



公私混同せずに、仕事は仕事と割り切れる。



誰から見ても頼れる社長であってほしい。



だから、誰にも隙を与えちゃダメなんだ。


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