旦那様は社長 *②巻*
「それは無理じゃ、悠河。お前は後継者としての責任がある。しきたりを重んじる嫁をめとり、しきたりに従って子孫を作る。これが今一番のお前の責務じゃ」
会長は相変わらず顔色一つ変えず、お茶に口をつける。
「会長。しきたりを重んじる有栖川を否定する気はありません。ですが時代は変わってきています。光姫は…子供がいらないとは言ってないじゃありませんか!!」
「…もういい。社長…もういいです」
もう分かったから。
……これ以上もめたってきっと何も変わらない。
社長の立場が危うくなるだけだって。
「会長…」
「分かりました。後8ヶ月以内に必ず子供を作ります」
………え。
あたしと社長の声が重なった。
でも…今……
子供作るって…言った?
…聞き間違いじゃないよね?
「必ず責任は果たします。それで問題はありませんよね?」
あたしのすぐ真上で、社長がハッキリ言った。
「それならよい。ワシはもともと光姫さんを気に入っておる。しきたりを守りさえすれば、何も言うことはない」
さっきまでの険しい顔と一変して、今の会長はいつもの…穏やかな表情をしていた。