旦那様は社長 *②巻*
「………」
今、この会話についていけないのはきっと…この空間であたしだけだ。
「話がまとまったところでワシは帰るとしようかの?」
ヨイショと小さく呟きながら会長が立ち上がる。
「また2人で屋敷に顔を出しなさい」
そう言い残すと、サッサと社長室を出て行く会長。
隣で社長が立ち上がり、礼をとるも、あたしはただ呆然とソファーに座り込んでいた。
ーー何…?
あたし…離婚しなきゃいけないって…言われなかった?
ーーパタン
社長室の扉が閉まったと同時に、社長があたしの横に座った。
そして。
握りしめたままのあたしの手を、大きな優しい手で包み込む。
「光姫…すまない…」
「………」
今のは何に対する詫び?
会長にヒドイこと言われたから?
しきたりのこと…黙ってたから?
それとも……
「子供…本…気…?」
微かに震える声を、あたしは一生懸命紡ぎ出す。
でも社長の目は見れなかった。