旦那様は社長 *②巻*
「どうして笑うのよ……」
「は?」
「あたしの前でまで無理して笑う必要なんてないじゃない!!」
気が付い時には、あたしは社長の両腕を掴んで大声で叫んでいた。
どうして笑うの?
あたしには今の社長が苦しそうに見えてたまらないのにーー。
「お前…何言ってんだよ」
「自分の顔…鏡で見る?悠河の今の顔…泣いてるよ…」
「…んでお前が泣くんだよ」
「悠河が…泣かないから…」
大人になって…社長になって…そして今度は有栖川グループの総帥になるあなたは…泣きたくても泣けないんでしょ?
男のプライドだってきっと邪魔してる。
だったらあたしが、代わりに泣くよ。いっぱいいっぱい泣いてあげるから。
「…ふっ、お前ってホント…バカな女だな」
さっきより少し柔らかい微笑みで、あたしの髪の毛をくしゃっと触った。
「バカでいいよ。それで悠河がラクになれるなら……」
ーーいくらだって泣いてあげるから。
「そっか」
そう言うと社長はあたしの涙を手で拭いながら、そっとあたしの瞼にキスをした。
「サンキュー…光姫」
「…っ、許してあげる」
「なんだそれ?態度でけーな」
あたしたちはおでこをくっつけたまま、クスクスと笑い合った。
許してあげるよ、社長。
あなたの頬を流れてる…そのキレイな涙でーー。